MOP102  ビームダイナミクス・加速器理論  8月8日 コンベンションホール 13:10 - 15:10
散乱体を利用した遅い取り出しビームのエミッタンス整合
Emittance matching of a slow extracted beam by the scatterer method
 
○藤本 哲也(加速器エンジニアリング),岩田 佳之(放医研),松葉 俊哉(広島大学),藤田 敬,佐藤 眞二,白井 敏之,野田 耕司(放医研)
○Tetsuya Fujimoto (AEC), Yoshiyuki Iwata (QST), Syunya Matsuba (Hiroshima University), Takashi Fujita, Shinji Sato, Toshiyuki Shirai, Koji Noda (QST)
 
放射線医学総合研究所では重粒子線がん治療の更なる高度化を目的として回転ガントリーを導入し、現在ビームコミッショニングを進めている。回転ガントリーコースではスキャニング照射法が適用され、430-48 MeV/uのカーボンビームが供給される。回転ガントリーでスキャニング照射を実現するためには回転角度に依らずアイソセンタースポット形状を円形に保つ必要があり、そのためにはガントリー回転部入口で水平、垂直のビーム条件を合わせることが重要である。しかしシンクロトロンからの遅い取り出しビームのエミッタンスは一般にx<yであり、また遅い取り出し法による水平方向ビームプロファイルはガウス分布でない。そこで、①高エネルギービーム輸送ライン中でエミッタンス整合を行う。②位相空間上で対称的な粒子分布にする。ことが回転ガントリーでは必要となる。これらの問題を同時に解消する方法として、散乱体を利用したエミッタンス整合法を採用した。これはイオンが散乱体を通過した時に生じる多重散乱を利用して水平、垂直のエミッタンスを合わせるものである。同時にシンクロトロン出射点からのフェーズアドバンスを調整することで水平方向プロファイルをガウス分布にすることが可能である。散乱体装置は回転構造とし、回転により散乱体実効厚を変えることで広いエネルギー範囲に対応できるように考えた。本発表では散乱体を使ったエミッタンス整合の試験結果について報告する。